グレーな彼女と僕のブルー
 しょせん子供の戯れ言に過ぎないのだが、わけもなく心拍数が上がる。

「でもいい友達だよ」

 紗里はそう付け加え、ふふふ、と微笑んだ。

 友達……。ってことは付き合ってはいないということだ。

 自然と口元が緩んだ。

「古賀先輩は……紗里のアレについて知ってんの?」

「アレ?」

「準備予知、だっけ」

 紗里はキョトンとした目を(しばたた)き、ふるふると首を振る。

「そんな。誰かれかまわず話せないよ」

「……そっか」

 何となく、胸のすく思いがした。じゃあさ、と言って、僕は言葉を続けた。

「古賀先輩に、俺が居候してることって。話した?」

「ん? 話さないよ? だって恭ちゃん言わないでって言ったじゃん」

「……そっか。そうだよな」

「うん」

 嬉しいと思ったのを悟られたくなくて、俯きがちに歩いていた。ふいに紗里が足を止める。

 道路を渡った向こう側をじぃっと凝視しながら、いつだったかのように左目を手で押さえていた。

 あ。

 もしかして、また……?

 さっき話した準備予知だと思った。

 紗里は小さくため息をついたあと、僕へと振り返った。

「ごめん恭ちゃん。先帰ってて?」
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