グレーな彼女と僕のブルー
「ううん、そうじゃなくて。朝、紗里が言ってたから。"今夜恭ちゃんが来るよ"って」

「……え」

 どういう意味だ?

 叔母さんの顔が曇る。ため息をつき、「紗里じゃなくて、お姉ちゃんでしょう?」と軽く(たしな)めている。

 叔母さんの勧めでリビングに入ることを促された。大和の発言はかなり気になったが、僕も足を向けようとして、ピタリと静止する。

 上の方からトントンと階段を降りる音が聞こえて、視線がそちらに吸い寄せられる。

「久しぶりだね。恭ちゃん」

 二階から降りてきた彼女とまともに目が合った。赤城 紗里だ。

 彼女は奇怪な色をした瞳を細め、赤い唇で弧を描いた。

 子供の頃はクセのある黒髪を二つにくくっていて幼稚な印象しかなかったが、八年も経てばこうも変わるのか。

 軽そうなベージュ色の髪が肩より少し先まで伸びていて、ふわりと揺れた。パーマをかけているのだろう、ところどころが緩くカーブがかっている。

 オフホワイトのシャツにサーモンピンクのショートパンツを穿いていて、ほっそりとした手脚が白く眩しい。

 彼女は僕と同じ高さに立ってこちらを見上げた。
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