グレーな彼女と僕のブルー
 紗里はいつもの調子で声を弾ませて三組に入って行った。

「ん? なんだよ?」

 みんなの視線が今度は誠に集中する。彼は首を傾げ、「そろそろチャイム鳴るぞー」と僕やみんなを促した。

 今、すごく普通に喋ってたよな……? 紗里も家で見る感じと一緒だったし。

 誠が紗里と友達感覚で話していたのを見て、正直面食らっていた。

 前は紗里が冷たい、みたいな事を言っていたけど。そんな感じは全くなかった。

 きっと何だかんだと誠が頑張った結果なのだろう。だからこそ、余計に腑に落ちなかった。

 紗里のことを諦めなくてもいいのにな、と。

 どこか胸の内でモヤモヤする気持ちを無理やり押し込め、席についた。


 *

 翌日、四時間目が終わるとともに椅子を引いた。

 昼ごはんを食べに行こうと思い、誠と一緒に教室を出たとき、「おい」と背後から声をかけられた。

 僕たちが同時に振り返ると、すぐそばに古賀先輩が立っていた。

「坂下に話がある、ちょっといいか?」

 言いながら先輩は顎でくいっとあさっての方向を差した。なんとなく不機嫌な先輩を見てピンとくる。その話というのは紗里に関することだ、と。
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