グレーな彼女と僕のブルー
 僕は若干、顔をしかめた。隣りでは誠が狼狽え、お疲れッスと愛想よく挨拶をしている。

 先日無視をしたことも手伝い、僕はヤケクソにどうとでもなれという気持ちで応対した。

「すみませんが、今から誠と昼メシなんで。先輩さえ良ければ今ここで話してもらってもいいですか?」

「……あ?」

 古賀先輩が鋭い目をし、眉間にシワを寄せた。

 おぉい、と誠が隣りで泡を食っている。僕は構わずに言葉をついだ。

「どうせ紗里と同居してる件についてですよね? もうさんざん一年の奴らに面白おかしく冷やかされてるんで、わざわざ場所を変える必要もないですよ。慣れてますから」

 周りからクスクスと忍び笑いが聞こえた。「なんだろう、修羅場かな?」と囁き合う声まで聞こえた。

 もともと紗里と噂されているのが古賀先輩だと知られているせいかもしれない。

 古賀先輩は周りを見回し、チ、と舌打ちをついた。

「じゃあここで聞くけど、何で一緒に住んでんだ?」

「家庭の事情ってやつです。急に住む場所がなくなって親戚を頼るしかなかった、ただそれだけです」

 全く動じない僕を見て、先輩は目を細めた。

「……へぇ、そうかよ」
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