グレーな彼女と僕のブルー
 怪訝な表情(かお)で彼女を凝視しながら、その瞳から目を逸らす事ができない。まるで会った瞬間から視線を縫い付けられたようだ。

 こいつ……。何で目がグレーなんだよ、カラコンでも入れてんのか?

 今どきカラーコンタクトなど珍しくもなんともないが、瞳の色と彼女が放つ雰囲気(オーラ)が妙にマッチしていて、幾らか居心地の悪さを感じる。

 右の脇腹をグッと手で押さえた。

「ちゃんと会えて良かったよ」

 彼女はどこか見透かすような瞳で僕を見たあと、僕の脇をスルリとすり抜けて行った。ふわり、と漂う甘い柑橘系の香りを残して。

 なんだアイツ。ちゃんと会えてって、どういう意味だ?

 やはり意図的に避けていたのを気付いていたのか?

 程なくして、母の声に呼ばれる。僕は彼女の残り香を追うようにリビングに向かった。

 ***
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