グレーな彼女と僕のブルー
 ロールキャベツ、たことホタテのカルパッチョ、エビピラフ、野菜サラダ、カボチャのスープ、そしてバースデーケーキだ。

 鮮やかな色彩が食卓に並び、ブドウと苺とみかんを飾った生クリームのデコレーションケーキを目の前にでんと置かれる。

 ホワイトチョコのプレートには"Happy Birthday きょうちゃん"と書かれていて、太い蝋燭(ろうそく)が一本と細いそれが六本立っていた。既に火は灯されていた。

「あ、ありがとう……」

 紗里を代表にバースデーソングを歌われて、若干気後れしてしまう。

 もう子供でもないのに恥ずかしいなと思う反面、こんなに賑やかな誕生日は生まれて初めてなので嬉しくもあった。

 無意識に笑みがこぼれた。

「なんか我が家も、この一か月の間にずいぶん賑やかになったなぁ〜」

 そう言っておじさんは笑い、気分よく晩酌を進めている。

 ひと月に一度しか帰って来れないらしいが、おじさんも居心地の良さを感じているのかもしれない。

 紗里と紗代子叔母さんはあのサプライズ企画以降、嘘みたいに仲良しだ。

 ご馳走に舌鼓を打ちながら、胸にポッと火が灯るような温かみを感じていた。
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