グレーな彼女と僕のブルー
 ところどころ、天井に付けられたライトが白い床に反射してフロアは明るく、家具が分類ごとに置かれているので見やすい造りになっている。

 奥に向かって歩いていると、商品を乗せた台車を押す女性店員さんにぶつかった。

「っあ、も、申し訳ございません」

 店員さんの平謝りによそ見をしていた僕こそが申し訳なくなる。

「いえ、大丈夫です。すみません」

 店員さんは再度会釈をしてから僕の前を通り過ぎて行った。

 ……あれ?

 そこで妙な違和感が頭をもたげる。いや、違和感と言うよりも、既視感だ。今の雰囲気、映像を、前にもどこかで見たような気がする。

 どこだっけ?

 今の人。前にもどこかで会ったような気がするけど……。

 誰だっけ、と散々頭をフル回転するのだが、考えたところでなかなか納得のいく答えが見つからない。

 まっ、いっか。

 多少気になりはしたが、今真剣に悩んだところで思い出せないし、思い出せたとしても、道端で会ったとか、どこかのお店ですれ違ったとかその程度の記憶だろう。

 僕は視線を上に上げ、それぞれ家具ごとに区分けした白いプレートを見つめた。
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