グレーな彼女と僕のブルー
 紗里は机・デスクのコーナーで見本家具として置かれた椅子に座りながらクルクル回っていた。

「恭ちゃん、これが良いよー。収納棚も引き出しも付いてるし、なにより見た目がオシャレ!」

「……あのなぁ」

 俺は女子か。

 紗里は、彼女の部屋に置いたら確かにしっくりくるだろう、という可愛らしいデザインの机セットを選んでいた。

「もっとシンプルでかっこいいのがいい」

 更に注文を付けると、彼女は「しょうがないなぁ〜」と言ってにこにこしながら別の机を探し始めた。

 このまま紗里だけに任せていたら、また可愛いものを勧められそうな気がして、僕も首を振りながらあちこちを物色し始めた。

 ……おぉ。この収納付きのL字型パソコンデスク、やばい。大人っぽくて凄くカッコいい……。

「あ」

 けど、高い。

 予算的には完全にアウトだ。

 片手万円を越える値札プレートを見て、がっくりと項垂れた。

「恭ちゃん、恭ちゃん」

 程なくして紗里からお呼びがかかる。

「良いのあったよ、恭ちゃんっぽい」

「どれ?」

「じゃじゃ〜ん!」

 何故か効果音付きで、紗里は両手をめいっぱい広げてデスクセットを差した。
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