グレーな彼女と僕のブルー
「……おお」

 今度はまともだ。

 本棚収納付きで幅120センチのパソコンデスクだった。色はシックな黒と柔和なホワイトの二種類。見た目もシンプルで機能性にも優れている。

「良いじゃん、これ」

 試しにセット売りされた椅子に座ってみた。肘掛けは気持ち程度にしかないが、背もたれが楽そうで何となくしっくりときた。

 値段はさっき見たやつの半額以下で、予算的にはギリギリセーフだ。

 ふいにクシャッと紙屑を丸めるようなシャッター音が聞こえた。音の出どころを目で追うと、紗里がピンクのスマホを構えてニヤリと笑っていた。

「見て? 素の恭ちゃん。良い写真が撮れた」

 ほら、と言って見せられたのは写真画像だ。見本のデスクセットを見ながら椅子に座る僕が写真として切り取られていた。

 ……か。

「勝手に撮るなよ」

 紗里のスマホの中に僕がいる。

 何故かそれだけでホワホワと胸が温かくなるのは、やっぱり僕が紗里を好きだから……だろうか。

 商品引き換え券を一枚取ってから、その他の家具を見て回っていると、鞄の中のスマホが鳴った。着信は母からで、合流したあと決めたばかりのデスクセットを購入した。
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