グレーな彼女と僕のブルー
 *

「いいのが見つかって良かったね!」

 もう少し買い物をしてから帰ると言っていた母と先に別れて、僕と紗里は共に帰路を辿っていた。

 ガードレールに仕切られ、車道に面した狭路(きょうろ)を、紗里はステップを踏みながら歩いている。見るからに上機嫌だ。

 自由気ままで天真爛漫で、時に謎めいていて何を考えているのか分からないのが紗里だ。

 好きだと自覚したからと言って、急に何かが変わるわけでもない。

 紗里にとっては、僕はひとつ年下の従兄弟で、それなのに同級生で、紗里の秘密を共有する、言わば仲間みたいなものなのだ。

 紗里との距離が近いのは、親戚で子供の頃からの関わりがあるせいだ。ただの従兄弟という枠組みを、今さらどうこうしようなんてことは考えられなかった。

 ただ一緒にいられればいい。それだけなんだ。

「どうしたの、恭ちゃん?」

「……え」

 つい先ほどまで僕の前を歩いていた紗里が、いつの間にか隣りに並んでこちらを覗き込んでいた。

 並ぶとすれ違えないほどの狭い歩道なので、僕は少しだけ歩みを遅らせる。

「さっきからしかめっ面。お腹痛いの?」

「……べ。別に」
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