グレーな彼女と僕のブルー
 怪我の具合を尋ねたこともあったが、「大丈夫」と返ってくるだけで、立ち止まってわざわざ話し込むことはしなかった。

 十一月に入った二週目の金曜日。朝はそこかしこに薄い雲が張り付くのみで澄んだ青空を見上げたはずだが、午後になりどこからか雨雲の大群が押し寄せ、放課後はかなりの雨が降っていた。

 部活は自主練となり、屋根付きのピロティでストレッチと筋トレをするよう顧問から指示が出た。その間に雨が止まなければ今日は解散だと言われ、その通りになった。

 僕は青い傘を差し、誠と一緒に正門を抜けた。頭上でバラバラと踊る雨粒の音を聞きながら何気ない会話をし、十字路で誠と別れる。

 あらかじめ、朝起きた時から決めていたことがあった。

 一度歩いた道を振り返り、踵を返した。来た道を走って戻りながら、一つ先の交差点を右に曲がる。何度か水溜まりを割りながら、既に歩き慣れた道を目的地に向かって走り抜けた。

 途中車のヘッドライトが低く照らし、白く細い雨を光らせた。まるで闇の中に浮かぶ銀色の針のようだ。

 片手で差していた傘を上げ、そこで一旦立ち止まる。
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