グレーな彼女と僕のブルー
 ひと月もの間、何度も帰宅し続けた赤城家が見えた。学校でもスマホの中でも、ほとんど話してくれない紗里と、何かまともな会話がしたかった。

 家から門扉に視線を移した時、そこに二つの傘が浮かんでいるのに気が付いた。黒っぽいものとピンク色の傘だった。

 見覚えのあるファンシーな柄のやつは紗里のものだ。紗里が誰かと話をしているのだと思い、一度躊躇した足を慎重に進めた。二人の会話を邪魔しないよう、通行人を装い、近付いた。

「そっか……やっぱりな」

 どこか寂しげに聞こえた声は古賀先輩のものだ。今日先輩も部活には出ていたはずだから、僕と同様に学校を出てすぐここに来たのだろう。

 先を越された……。

 そう理解して、胸の中が熱く苦しくなった。ドロドロとした溶岩が流れ込み、埋め尽くすようだ。

 これまでに何度も感じてきた嫉妬が、僕の心臓にこれでもかと言うほど針を突き立てる。

「ごめん、古賀っち。本当にごめんね」

「バカ、謝るなよ。むしろちゃんと振ってくれたから、諦めがつくってもんだ」

 ……え?

 僕はゆっくりとした動作で歩みを止めていた。
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