グレーな彼女と僕のブルー
 今、振ってくれたって言った? て事は古賀先輩……告白したってこと?

 二人の会話が続くようなら、このまま通り過ぎようと思っていたのに、その場に立ち尽くし考えてしまう。

 そういえば誠から聞いた話では、紗里は好きな奴がいるとのことだ。告白を断るための口実かもしれないが、本当のところは分からない。

「……え。恭ちゃん?」

 傘を下げて思考を働かせていると、当然不審に思われたようで、紗里が怪訝な声を発した。

「……あ」

 堂々と盗み聞きをしてしまったので、幾分きまりが悪い。ひょいと傘を上げた古賀先輩と目が合った。

 僅かではあるが、先輩は目を細めて口元を上げた。意外にも優しい表情だった。

「じゃあな、紗里。また学校でな?」

「うん。気をつけて帰ってね」

 先輩は歩き出し、僕を横目に捉えた。すれ違いざま微かな声量で「頑張れよ」と言われ、思わず振り返る。

 古賀先輩……。

「恭ちゃん、なんで……?」

 紗里がポソっと呟いた。

「……あ、遊びに来ていいって言われてたから」

 あんなのは社交辞令に決まっているのに、僕はそれを言い訳にした。
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