グレーな彼女と僕のブルー
 そう思ったところで、父が夢で言っていたメッセージを思い出し、どこか不思議な感覚に首を傾げた。

 て言うか、今は何時なんだ?

 そういえばスマホ……どこにやったっけ?

 スマホの待ち受けから時間を確認したくて軽く枕元を探すが、黒いケースを付けたそれは全く見当たらない。

 仕方なく布団から起き出し、簡単に寝具をまとめた。蛇腹に畳んだ敷布団の上に、四つ折りにした掛け布団を重ね、枕を置いた時。コンコンと部屋がノックされた。返事をする前にドアが開く。

 無防備な心臓がトクンと跳ねた。

「おはよぉ、恭ちゃん。……ちゃんと眠れた?」

 サリーちゃん、もとい、紗里が僕を見て穏和な笑みを浮かべた。

「……あ。うん」

 立ったままで腰に手を当て、暫し固まってしまう。アーモンド型に細められたグレーの瞳から目を逸らすことができない。

 それにしても、紗里のこの気安さはなんなんだ? 会うのは八年ぶりなのに。

 もっとぎこちない雰囲気になると思っていただけに、狼狽えていた。

「これ、恭ちゃんのスマホ。さっき鞄の中で鳴ってたよ?」

「……え、ああ」

 ありがと、と呟き、紗里からスマホを受け取った。

 ゆうべのドタバタから鞄に入れっぱなしになっていたのだ。
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