グレーな彼女と僕のブルー
「だ、だいたいおまえ。ラインしてもほとんど無視ばっかだし、学校でも全然喋らないし。正直言って感じ悪いぞ」

「……うん」

「何か怒ってんのかよ。俺、何かした?」

 紗里は傘の持ち手をギュッと握りしめ、無言で首を振った。

 きつく眉根を寄せて、さっきからずっと濡れた地面を睨んでいる。

 今さらながら、濡れたズボンの裾が気になった。靴にも水が染みていて不快指数はマックスだ。

「恭ちゃん。あんまりあたしに……関わんない方がいいよ?」

 ……は?

「っなんで!」

「だって恭ちゃん。今までに三度も死にかけてるんだよ?」

「………え」

 言葉の意味を理解して、ゾクリと背筋が粟立った。

「一度目は火事の翌日。あの日部活に出なければ、恭ちゃんはコンビニに出掛けて事故に遭ってた」

 紗里が。

 母さんのやったことだと言って、ジャージと体操服を洗ってくれた日のことだ。

「二度目は長距離走の試合当日。ナイフを振り回した通り魔を押さえるために飛び出して、お腹を刺されてた」

 捻挫を理由に出ることはおろか、応援にさえも行けなかった。軽症だが、誠も怪我をした。
< 150 / 211 >

この作品をシェア

pagetop