グレーな彼女と僕のブルー
episode12.
部屋でひとり、折りたたみテーブルに向かって胡座をかきながら、状況を整理しようと考えていた。
目の前にはまだ何も書いていないノートが置いてあり、紙面の罫線が早くペンを突き立てろと急かしてくる。
さっきから性別男性のノートを穴が空きそうなほど見つめ、僕はシャーペンを握りしめていた。
あのあと、紗里はろくに説明もせずに僕に背を向けた。
「会いに来てくれてありがとう」
背中でそう言って、刑事の車に乗り込んだ。
「っあの、あいつは何もやってません!」
幾らか傘を持ち上げてそばに佇む男性の刑事に詰め寄った。
「それを今から警察署で聴くんだよ」
彼は大人特有の落ち着き払った笑みで言い、僕をジッと見た。
「キミは? あの子の彼氏かなにか?」
「……あ、いえ」
彼氏、というワードに頬が熱くなるのを感じる。「従兄弟です」と正直に告げた。
そう、と短く返事をして、そのまますれ違うような気がしたので「あの」と再度声を上げる。
「れ、令状はあるんですか??」
普段、紗里と大和がハマって観ていたドラマをふいに思い出し、そう尋ねていた。刑事は目を丸くしている。