グレーな彼女と僕のブルー
「これは任意だからね。必要ないんだよ」

「……任意?」

 任意同行と理解して、それなら逮捕ではないんじゃないかと思い至った。ホッと安堵したのを見抜いたためか、刑事は「ただね」と眉を寄せて注釈した。

「詳細は話せないんだけど……あの子の場合はグレーなんだ」

 グレー……。

 つまりは今すぐ逮捕されるわけではないけれど、容疑はかけられているということだ。

 刑事はその後赤城家を訪ねた。玄関先で紗代子叔母さんに紗里から聴取を取る旨を伝えていた。

 言うまでもなく、叔母さんはショックからたたきに膝を落としていた。

「またこちらから追ってご連絡いたします」

 刑事は小さく会釈を残し、セダン車に乗った紗里を連れて去って行った。

 とめどなく降る雨の中、ただただ車のテールランプを黙って見送ることしかできなかった。

 玄関先で青ざめる紗代子叔母さんに声を掛けると、叔母さんはどこかホッとしたように眉をさげた。「良かったら今夜は泊まっていって?」とお願いされた。

 大和と二人きりで、なおかつ予測不能な事態を乗り切るのが心細いのだろう。

 僕は快く了承し、母に一泊する旨をラインで知らせた。
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