グレーな彼女と僕のブルー
「どうやら隣りの家から燃え移ったみたい」だと。その証拠に、僕の家は半焼で済んだ。つまりは、火元は確かに隣りの家なのだ。

 (まるいち)と書いてその内容をノートに書き出す。

 そして火災があった時間帯、仕事に出ていた母や学校に行っていた僕は、当然家を空けていた。火元である隣人も外出していたらしく、燃えたのは建物のみで死傷者は出ていない。

 (まるに)にその内容を書き足す。

 近所のおばさん連中の話によると、放火されたとのこと。これが紗里の犯行を差しているのかは不明。

 けれど、あの火事に紗里が関わっていると睨んで刑事は彼女に任意同行を求めた。

 (まるさん)にそのことも書いておいた。

 夕方、紗里は言った。「恭ちゃんの家で火をつけたから」と。聞いた瞬間は、それじゃああの火事は紗里が原因で? とかなりの衝撃を受けたのだが。

 すぐにその考えは間違いだと気付いた。再三言っているが、火元はあくまで隣人宅だ。

 そして紗里は"家に"火をつけた、ではなく、"家で"火をつけたと言っていた。

 その意味は、僕の家にあるささやかながらの庭か、あるいは玄関先で、何かを燃やしたということだろう。

 これが紗里の言う準備予知に基づくものだとしたら、何かを燃やすことで変わる未来があったということだ。
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