グレーな彼女と僕のブルー
 今日は土曜日だから学校はないはずだけど、と考え、不在着信と時刻を確認する。「あ」と声がもれた。親友からの着信だった。

 ーー8:50友田(ともた) (まこと) 不在着信ーー

 そうだ……部活だ。

 昨日の火事うんぬんでリアルを忘れていたが、土曜日は九時から部活があったんだ。

 そろそろ試合が近いから、とにかく遅刻してでも行かないと!

 そう思い慌てるのだが。そこでハタ、と気が付いた。

 ジャージと体操服……どこだ?

 昨日からの記憶を巻き戻しにして、軽く途方に暮れた。

 そうだよ、ジャージと体操服、無いじゃん!

 昨日のは通学鞄に入れっぱなしのはずだし、予備のジャージも体操服も昨日の消火活動で濡れたままだ。ボストンバックに詰めてきた覚えがある。

 どうする……?

 ジャージと体操服がない状態で部活には行けない。

 いや、昨日いきなり家が燃えて、はっきり言って緊急事態なんだよな? この場合休んでも仕方ないんじゃ……?

 いやいや、それはマズい。せっかく試合への参加が叶ったんだ。少しでも多く走り込んでおかないと。

 ひとり無言であたふたしていると、一度部屋を出て行った紗里がまた戻って来た。

「はい、どうぞ?」

 え……。

 紗里が両手で差し出したものを見て、指先が固まった。
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