グレーな彼女と僕のブルー
 敷いた布団に座り込み、唇の内側をギュッと噛み締めた。

 紗里がまだ帰って来ないとなると、僕だけで答えを見つけなければいけない。

 そう考えたところで、ダイレクトに放火の被害を受けた"隣人宅"が頭に浮かんだ。

 火事のあったあの日のことを、直接隣人からも聞ければいいんだけど……。

 お隣さんとはほとんど付き合いがなかったせいで苗字すら知らない。

 確か……、若い女の人だったと思うけど。

 考えたところで僕の頭はろくすっぽに働かず、そのまま枕に頭を埋めるしかなかった。


 *

 翌日。目が覚めるなり、布団から飛び起きた。習慣づいた動作で布団を畳み、一旦窓を開けてから外の冷えた空気を肺に送り込んだ。

 今日やることは決めていた。

 洋室を出てトイレに立った際、玄関で一度靴を確認した。あのあと気が変わってーー、なんてこともなく、紗里はまだ帰って来ていないようだ。

【おはよう。結局昨日はおまえんちに泊まったぞ】

【いつ帰って来れるんだ?】

 僕は床に置いたままのスマホを持ち上げ、今が七時前であることを確認すると紗里にメッセージを送った。が、既読にすらならない。おそらくはスマホを預けているとかそういった事情で見ていないのだろう。
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