グレーな彼女と僕のブルー
 十五分ほど走らせて着いた場所は、以前住んでいた火事の跡地だ。

 ノートと向き合って考察をしていても前には進めないと考え、刑事で言うところの現場検証というやつに繰り出したわけだが。ここから何かヒントが得られるかどうかは(はなは)だ疑問だ。

 およそひと月ぶりに訪れた元自宅跡は解体業者の工事が済んでいて、綺麗な空き地となっていた。

 お隣さんの家も無く、ただの土地だけになると思った以上に狭く感じられた。

 この辺りに黒い門扉があって、と考え、一歩二歩と歩みを進める。

 紗里が勝手に門を開けて入ったのを想像し、ちょうど良い場所で立ち止まった。

 その場に佇み、僕は横を向いた。隣人宅の玄関までは少し距離があったはずだが、確か二階のベランダはすぐ側に位置していた。

 仮にこの辺りにしゃがみ込んで火をつけたのだとしたら、門柱で外からはよく見えないはずだし、放火という名の狼煙(のろし)を上げるのは可能だったはずだ。

 ふいにジロジロと見られているような視線を背中に感じた。
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