グレーな彼女と僕のブルー
 おばさんは「え」と呟き、一瞬目を丸くするが。そのまま頬に手を添えて何度か首肯した。

「ええ、ええ、そうねぇ! おばさんが聞いた話では火事のあった日、この辺りから不審な男が逃げて行くのを誰かが見たそうよ? どうも見慣れない男だったみたいだけど……」

「っ、そうなんですか?」

「ええ」

 見慣れない男……そいつが犯人なのだろうか?

 それに、と続け、おばさんはどこか浮かない表情(かお)で首を傾げた。

「あのあと何度か刑事さんも来てたのよねぇ。おばさんも……聞き込み? っていうのをされたし」

「聞き込み、ですか」

「ええ。この辺りで不審な女の子を見なかったかって聞かれて……」

「……女の子?」

 思わず眉をひそめた。

「そうよ。そこの田中さんから聞いたんだけど、火事のあった一時間ぐらい前に、見慣れない女の子が坂下さんちの門を開けて入って行ったって。あなたのガールフレンドか何かだと思ったそうだけど」

「………」

 紗里だ。

 僕は無言で眉を寄せた。

「それを聞いておばさんも思い出したんだけどね。火事の前日に多分同じ子を見てるのよ」

「え……」

 前日?
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