グレーな彼女と僕のブルー
「ちょうどあなたぐらいの高校生の女の子で派手な髪色をしていたわ。
 その子がしばらく坂下さんちの前をうろついてて、急にピタッと足を止めたかと思うと、こうやって左目を手で押さえてそこの辺りをじぃっと見ていたのよ」

 おばさんは身振り手振りを交えながら、僕が先ほどしゃがんでいた場所を指差した。

 やっぱり紗里は視たんだ。隣人宅が燃える映像とその前に取る自分自身の行動を。

 そう確信したところで、僕は首を捻った。

 でも、何で僕の家へ来ていたんだろう? 僕に会いに、というのは考えられない。まだあの時は紗里と再会していなかったから、僕にとって彼女は苦手な存在だった。

「どうかした?」

 ふいに黙り込む僕を不審に思ったのか、おばさんに顔を覗き込まれた。

「あ、いえ。……じゃあ、それを刑事さんに?」

「ええ。放火とは全く関係ないと思ったんだけどねぇ。詳細は聞いても教えてもらえなかったし、見たままを話したわねぇ」

「……そうですか」

 ありがとうございます、と述べるとおばさんは地面に置いた箒を持ち上げて玄関先の掃除を始めた。

 僕は先ほど立っていた玄関前に近付いた。

 おばさんの証言から紗里とは別に放火犯のいる可能性が浮上するのだが。

 紗里が取った不審な行動のせいで、たとえば共犯などの容疑をかけられているのではないかと思った。
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