グレーな彼女と僕のブルー
　開店から五十分ほど過ぎた時間に辿り着き、僕は迷わずサービスセンターに向かった。

「あの、すみません。ここにハスダさんという店員さんがいると思うんですが、今日って出勤されてますか？」

　元隣人とは別の女性店員さんに声をかけると、幾らか不審な目を向けられた。

「……あなたは？」

「え」

「ハスダとはどういったご関係ですか？」

「えと、あの……。前に住んでいた家の、隣りだった者で……坂下といいます」

「それで？」

「……え？」

「見たところ高校生ぐらいに見えるけど。香奈恵に何かご用ですか？」

　女性店員さんの威圧感に負け、若干言い淀む。この場合、なんて言って説明するのが妥当だろうか……？

　暫し無言でいると「なに、どうしたの？」と別の方向から女性の声がした。

「いや、この子が香奈恵に用があるって言うから……」

　あとに現れた店員さんを見て、あ、と口を開ける。お隣のハスダさんだ。

　黒いエプロンに付けられた名札を見て、漢字表記では蓮田(はすだ)と書くことが分かった。もう一人の店員さんは矢吹と書かれたプレートを付けていた。

　蓮田さんは僕の顔をじっと見て首を傾げる。「前に隣りに住んでいた坂下さんだって聞いたけど」と矢吹さんが補足してくれる。
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