グレーな彼女と僕のブルー
 途端に蓮田さんの表情が変わった。サッと青ざめ、「その節はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした」と頭まで下げてくる。

「……えぇと、あの?」

「本当はお母さまの方にも謝罪を申し上げるべきだったんですけど、あの日私の帰宅が遅かったせいで会えなくて」

 どうやら蓮田さんは放火の被害が僕の家にも及んだことを気にしているらしい。

「いや、別にっ。文句を言いに来たとかそんなんじゃありませんから」

「……え??」

 蓮田さんと矢吹さんは目をぱちぱちと(しばたた)き、わけが分からないと言いたげに首を傾げていた。

 どう説明すべきか迷ったが、率直にお願いすることにした。

「火事のことでちょっとお尋ねしたいことがあるんです……十五分ぐらいで良いんでお時間もらえませんか?」

 勿論、仕事中なのは分かっていたので、「休憩中とか空いた時間まで待ちますから」と言い添えた。

 蓮田さんと矢吹さんが顔を見合わせ、そばにある置き時計を確認した。

「十五分ぐらいなら今話してきても大丈夫だよ。まだ全然暇だから」

「うん。だよね?」

「……え」
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