グレーな彼女と僕のブルー
 ジャージと体操服だ。それも洗濯して綺麗に畳んである。

「なんで?」

 なんで今必要なものが分かった?

 そう問いたかったのだが、紗里はキョトンとした目で首を傾げた。

「今朝、美弥子さんに頼まれたから」

「え、母さんに?」

「うん。朝イチで乾燥機かけてくれてたよ」

「……そうなんだ」

 仕事もあるのに悪かったな……。

「あ、りがとう」

 母も家の問題と仕事で大変な状態なのに、僕のことにまで気を回してくれるなんて。

 あとでラインしておこう。

 しんみりとした気持ちで紗里からジャージたちを受け取った。

「ごめんね、本当は起こすことも頼まれたんだけど。恭ちゃんがあんまり気持ち良さそうに眠ってたから」

「……え」

「朝ご飯。キッチンにおにぎり置いてあるからね」

 妖しく細められた瞳がパタンと閉まる扉で見えなくなった。

 寝顔……見られたのか。

 反射的に口元に手を当てた。よだれは出ていなかったようで、ひとまずは安心した。


 *

「でよー、俺情報ではそれが二年の先輩だってことまで絞り込めたんだ。やっぱり彼氏いるのかなぁ、恭介〜」

「……さぁな」
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