グレーな彼女と僕のブルー
 あれだけ喋ってスピードアップもしてほとんど息が上がらないのだから、誠の持久力(スタミナ)も大したものだ。

 試合では共に五千メートルを走るので、負けていられない。

 仕方なく「聞いてるよ」と返した。

「そのタカギさん、だっけ? その子に直接訊けばいいじゃん、彼氏いんの? って」

 呆れて嘆息すると、誠が幾らかムッとした。そういえば直接話をした事がないと言っていた気がする。

「違うぞ、恭介」

「は?」

「タカギじゃなくてアカギさんだ」

「……え」

 その苗字を聞いて頭の中に紗里の顔が思い浮かぶ。

 でもそんなはずは無い。あいつは一つ年上だから学年が違う。

「さては今までずっと聞き間違えてただろ〜?」と今度は誠が呆れ顔だ。

「俺も直接聞けたらいいんだけどよぉ、気安く話しかけられるような雰囲気じゃねぇんだよ。こう、なんつーか神秘的なんだ、アカギさんは」

「……ふぅん」

 聞きながらアカギという苗字の多さについて考えてみる。そう珍しい姓でもないのかなと思い至り、漢字表記は赤木か赤城のどちらだろうと想像した。

 とにかく誠が想いを寄せるのは一年の赤木さんだ、覚えておこう。

 そう考えている()にも、誠の話は続く。
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