グレーな彼女と僕のブルー
「両思いなんだからさ、とっとと好きって言って付き合っちまえばいいんだよ。はたから見てるこっちが焦れったいわ」

「……う。分かってる、けど」

「ウカウカしてると……古賀先輩みたいな肉食系に取られんぞ?」

「っ、それは嫌だ!」

 焦った僕を見て、誠が彼らしい笑みでニカッと笑い、ポンポンと背中を叩いてくる。

 おそらくこれは初恋なんだと思う。普段から苦手意識を持っているせいか、異性を特別な意味で好きになったことなんて、ただの一度もなかった。

 感情が揺さぶられるのは紗里が初めてなんだ。だからこそ、余計に戸惑った。

 紗里への気持ちを自覚したころは、ただ一緒にいられればいいと思っていた。

 けれど悲しいかな、人の気持ちは変わる。

 かく言う僕がそうなのだ。

 火事に遭い、赤城家へ居候することがなければ、再び紗里と関わることはなかっただろうし、紗里を特別な感情で好きになることはなかった。……と思う。

 そして誠が言う通り、僕の勘違いでなければ紗里からの好意はビシビシと伝わっているわけで、僕と彼女は第三者(はた)から見れば恋人同士、ということだった。



「恭ちゃん、お疲れ」

 制服にコートを羽織ってマフラーを巻き、いざ帰ろうとすると絶妙なタイミングで紗里が現れた。
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