グレーな彼女と僕のブルー
 毎週金曜日になるとたいてい紗里は僕の帰宅を待っていて、そのまま一緒に帰る流れになる。

 辺りはもう暗いので、僕としては少し遠回りになるのだが、紗里を送ってから家路を辿っていた。今日もそうなるのだろう。

「じゃな、恭介、頑張れよ〜?」

「……え」

 ポンと背を押されて振り返る。

「誠も途中まで一緒じゃ……?」

「わりぃ、今日は寄るとこあるからさ〜」

 ここで、と言って正門前で手を振られる。

 おそらくは、誠なりに気を利かせているんだろう。いい加減告白しろ、とその背中が言っていた。

 隣りに並んだ彼女が慣れた動作で僕の左手を握ってくる。その度に心臓が跳ね上がり、頭の中が彼女一色で埋め尽くされる。

 冷たい手だな、と思った。寒空の下で僕の部活が終わるのを待っていたからじゃないか、そんな自意識過剰にも似た気持ちで、申し訳なさと嬉しさが脳の中で討論をはじめる。

「もうすぐクリスマスだね〜」

 紗里が浮かれた声で冬の夜空を見上げた。夜空と言っても、時間で言えばまだ六時過ぎだ。

「そうだな」と軽く相槌を打つ。吐く息が白いもやとなって冷たい風に流された。

「恭ちゃん、二十四日のイブって空いてる?」

「……二十四日って、終業式だろ? 部活があるぐらいで特に予定はないけど」
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