グレーな彼女と僕のブルー
 留年という情けない理由ではあるけれど、せっかく彼と同じ一年生になれたのに。

 どうせなら同じクラスが良かった。恭ちゃんと同じ二組なら、四月の自己紹介であたしの存在を知ってもらえただろうし、時々話すこともできただろう。

 今日も今日とて、あたしは従兄弟の恭ちゃんに「久しぶり」と声をかけることができなくて、ため息を浮かべてしまう。

 もちろん、気安く声をかけられない理由はある。

 今から八年前。

 あたしと恭ちゃんは時々遊ぶぐらいには仲が良かった。

 ママとママの妹の美弥子さんが仲の良い姉妹だったこともあり、あたしたちは家や公園、ショッピングモールなどの商業施設でよく遊んだ。

 それがなぜ、話しかけるのに躊躇を感じるほど疎遠になってしまったのか。

 当時小学三年生のあたしが、自身の欲望を満たすために暴走してしまったからだ。

 ひとつ年下の恭ちゃんに兼ねてから試してみたいことがあり、つい実行してしまった。

 可愛く愛くるしい顔を持って生まれた彼に、あたしは嬉々として女の子の格好をさせた。
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