グレーな彼女と僕のブルー
　もう八年も会っていない恭ちゃんに会う手立てを散々思案し、彼を尾行することで自宅を突き止めた。この家へ来るのは初めてではないけれど、正確な場所と位置は覚えていなかったからだ。

　恭ちゃんの家が分かったからと言って、いきなり訪問することなんてできないのだが、会うための手段にはなると思っていた。

　家が分かれば休日に偶然を装って通りかかることができる。そうしたら否が応でも再会できる。せいぜいそのぐらいの考えしか持ち合わせていなかったが、今週末に決行するつもりでいた。

　それなのにまさか、恭ちゃんの家が燃えてしまう未来を視るなんて。

　今しがた視た映像の端に、灰色の数字が浮かんでいた。数字は＂10/1．18：03＂、つまり明日の夕方を示していた。

　ハァ、と重い吐息がこぼれた。

　あたしに悲惨な未来が視えたということは、この未来を変えなければいけないということだ。

　再び左目を手のひらで覆い、あたしは影を探した。未来を変えるために動く、あたしの姿をした影だ。

　っあ……。

　それは坂下家の前に突然浮かび上がった。

　単純に火事を食い止める行動だろうか、そう思い、見つめるのだが。右目が視せたあたしの行動はそんなものではなかった。
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