グレーな彼女と僕のブルー
 こうまで紗里と被るのは奇妙でならないが、あいつは二年のはずだ。そもそも同じ高校かもしれないという可能性について、今まで考えたこともなかった。

 同じ校区内に住んでいるのだから、それは充分あり得るが。

 同じ学年はあり得ない。僕は今年で十六歳になるし、あいつは十七歳だ。

「そのアカギさんって、名前なんていうの?」

 奇跡的に条件が被っているだけと思い込みたくて、フルネームを尋ねてみた。

 僕の質問に驚いたのか、誠がキョトンとした目でまばたきする。

「サリだよ。赤城 紗里」

 脳内に記憶された一年の赤木さんが、即座にあの従姉弟に塗り替えられる。

「そ。そうなんだ……」

 僕たちの背後からざっざ、と追い上げる足音が聞こえた。

「おーい、坂下に友田! おまえらたらたら走ってねぇで、さっさとメニュー終わらせるぞー」

 二年の古賀(こが)先輩が颯爽と僕たちを追い抜いて行った。いつも無愛想で怖いイメージしかない先輩だけど、長距離走に対する姿勢は真面目そのものだ。

「はい」と返事をして僕たちはペースアップした。

 えっと。外周いまので何周目だっけ……?

 モヤモヤした気持ちで首を傾げた。


 *

『それ母さんじゃないわよ?』

「……え?」
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