グレーな彼女と僕のブルー
 紗里は一年三組で、どういう訳か同じ学年で、僕が陸上部だと知っていて、土曜に部活があることも把握している。

 反対に僕は紗里の事なんてこれっぽっちも知らないし、だいいち興味もないし、極力関わりたくないとも思っている。

 それでも、「ありがとう」は言うべきだよな……?

 気付いたら従姉弟んちの玄関前まで歩いていて、タイミングよく紗里が顔を覗かせた。

 ……う。

 門扉を開けるのを一瞬躊躇うが、紗里の後ろに大和もいて「お帰り、恭ちゃん」と出迎えてくれる。

「た、ただいま」

 ひとりっ子の僕にはかなり新鮮で、少しだけ嬉しくなる。

「ねぇ、恭ちゃん。お昼ご飯作ってよ?」

 ……は?

 たたきで靴を脱いで早々にそんな要求をされる。グゥ、と腹の虫が鳴った。

「なんで俺が」

 むしろ作って欲しいのはこっちの方なのだが、居候の身なので強く出れない。

「だって恭ちゃん、料理できるでしょう?」

「……て言うか。何で知ってんの?」

「さぁ〜、何ででしょう?」

 紗里はクスクスと笑い、鞄を下ろした僕の手を強引に引っ張った。

「っあ、おい」
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