グレーな彼女と僕のブルー
「あたしもやっくんもね、チャーハンが食べたいんだぁ。材料は揃ってると思うから〜」

 キッチンにある冷蔵庫の前まで連れて来られて、紗里が扉を開けた。しぶしぶ中を覗き込む。

 冷やご飯、卵、玉ねぎ、ベーコンにネギ。

 確かに材料は揃ってる。

「調味料は?」

「ここにあるよ!」

 調理スペースの隅に置かれた調味料ラックに醤油、塩胡椒、オイスターソースが乗っていた。

 ガスコンロの五徳(ごとく)の上には、ご丁寧にフライパンと木べらが用意されている。

 にこにこ笑う紗里が、急に親の帰りを待っていた子供に見える。大和ならなおさらだ。

 グゥゥ、とまた腹が鳴る。僕は羞恥心から腹を押さえた。

 やばい。こうなったら一刻も早く胃の中になにかを入れなければ。

「……手、洗ってくる」

「はーい」

 あーあ、こんなことなら何か買って帰れば良かった。


 *

 うずたかく盛った焼飯にスプーンを入れて、せっせと口に運び咀嚼に集中する。三人で食卓を囲んでいた。

「っうん! 美味しいよ、恭ちゃん。ご飯もちゃんとパラパラだし、流石だね!」
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