グレーな彼女と僕のブルー
 とにかく腹を満たすために、スプーンで掬っては食べるを繰り返しているのだが、紗里と大和の反応はすこぶる良かった。

 二人ともひと口目に感動したのか顔が綻んでいた。

「やっくんがね。一時間ぐらい前からお腹すいたって言ってたから、恭ちゃんの帰りを待ち詫びてたの」

「……ふぅん」

 いや、おまえが作れよ。

「美味しいよねー、やっくん!」

「うん。紗里ならこうはいかないからなー」

「うるさい、ひとこと余計!」

 焼飯の半分を食べ終えたところで紗里がお茶を飲んだ。

 なるほど。一応作りはするけど苦手なのか……。

 それなら仕方ないかと思い、僕は皿を空にする。飢えの苦しみから解放されて、満足感に息をついた。

 僕は年季の入った母子家庭だし、料理は性に合っているので作るのは苦じゃない。

 何より、誰かが美味しそうに食べてくれるのは正直言って嬉しい。

「ママがね。よく言うんだよ。従兄弟の恭介くんはちゃんと自炊ができるんだから、紗里も見習って料理しなさいって」

 残りの焼飯を口に運びながら、紗里が聞いてもいないことを話す。

 それで知ってたのか、と思いつつグラスの麦茶を飲み干した。
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