グレーな彼女と僕のブルー
 突如として、みぞおちにカウンターパンチをお見舞いされたような気分になった。不意打ちとはまさにこのことだ。

「あの頃のあたしは……恭ちゃんの可愛い顔が大好きでさ。何も考えずについ暴走しちゃってたけど……あとあとになってから実は嫌だったんじゃないかって、思うようになって。嫌って言わないかわりに避けられてるんじゃないかなって気付いて。ずっと後悔してたの」

 申し訳なく眉を垂れた彼女を見て、僕は何も言えなかった。何も考えられずに思考までストップして無意識に足を止めていた。

「だから……ごめんねって。会えたら謝ろうと思ってたの」

 子供の頃の、あの異端者はもうここにはいない。そういうことなのだ。

 冷静に判断し、思考がゆっくりと動き出す。

「……うん」

 ようやく返事だけを返して、再び歩き始めた。

 なんなんだ?

 紗里の変化にびっくりして、どうも調子が狂う。

 急に居候することになって物理的な距離が縮まったから、しおらしくなったのか?

 いや。でも紗里は自分のしたことに対して後悔していると言っていたし、ずっと会わないでいた僕にわだかまりのようなものを感じていたのかもしれない。
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