グレーな彼女と僕のブルー
 僕はぽつんと置かれたカラーコーンを見て暫し静止していた。

 すぐ側に停まった車の運転手も怪訝な顔でこちらを見ている。既に歩き出した紗里の背中から僕に視線が移るのを見て、ギクっとなった。

 共犯じゃないのに同じ制服を着ているせいでひとくくりにされていると思った。

 急に居た堪れなくなり、慌てて踵を返した。

「何であんな邪魔なとこにカラーコーン置くんだよ、交通事故の元になるかもしれないだろ?」

 車の運転手にも変な目で見られたし。

「あれ? 恭ちゃん、先に行くんじゃなかったっけ?」

 う……。

「行くよ。行くけど……」

 紗里の奇怪な行動で当初の予定が狂わされた。だいたい先に行こうとするのを止めたのは紗里なのだ。

 不満を言葉にできず口ごもっていると、ベビーカーを押している若いお母さんとその隣りを歩く少女とすれ違った。少女は幸せそうな笑顔で母親と手を繋ぎながら歌をうたっている。

 ふいに紗里がスカートのポケットからスマホを取り出し、待ち受け画面を見てから背後を振り返った。彼女の行動が謎すぎて、僕も視線の先を追った。
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