グレーな彼女と僕のブルー
episode4.
思わず自分の耳を疑った。なんなら何かの言葉と聞き間違えたんだと思った。
けれども幾ら考えてみても"赤城さん"や"一緒に住んでいる"いうワードは、他の言葉では置き換えられない。
僕は意を決して誠に尋ねた。
「……いま。なんて?」
誠は呆れたように嘆息し、眉を下げた。
「赤城さんから聞いたよ。今恭介が居候してるって」
「……っ、それは」
大真面目な顔をしかめながら、誠が僕の肩に両手を置いた。
「水くせえじゃんか」
「……? え?」
「火事で家なくなったって、そんな一大事黙ってるなんて水くせえよ。なに翌日にしれっと部活来てんだよ、俺に相談ぐらいしろよな!」
「誠……」
「……まぁ。相談されたところで、なんにも変わんねーけど、な」
そう言って誠はそっぽを向いた。語尾は尻すぼみになり、ゴニョゴニョと言葉を濁している。
「ごめん。火事に遭ったことは本当に大変だったんだけど……そのせいで女子の家に世話になってるっていうのが言い出しにくくて……黙ってた」
ぎこちない笑みで誠を見てから、肩の手をどかした。若干怒っていた表情筋を緩め、「そっか」といつものように誠が笑う。