グレーな彼女と僕のブルー
「古賀っち、寝るんだよね。あたしたちはもう行くからさ、グッスリ休みなよ」

 おやすみ、と弾むような声を掛けて紗里が後方の扉に足を向ける。挨拶もそこそこに僕は会釈だけを残して歩き出した。

「紗里だけ残れよ、話そうぜ?」

「えぇ? ホームルームに遅れちゃうー」

「……じゃあ。昼休み来いよ」

「うーん……了解。じゃね!」

 ひらひらと手を振る紗里を視界の端に捉えて、僕はそのまま教室に戻った。

 紗里と古賀先輩が親しいのは、おそらく元同級生だからだろう。もしかすると付き合っているのかもしれないが、そんなこと僕にはどうだっていいことだ。

 ただ、土曜日に聞いた誠の言葉を思い出していた。

 紗里が二年の先輩と噂されているという内容だ。

 あれは古賀先輩のことを差していたんだ。

 誠にそれとなく言うべきか、様子を見るべきか。

 考えたところで圧倒的な面倒くささが勝ち、僕は後者を選んだ。


 *

 メッセージアプリのIDを交換できたことで、誠は一日中浮かれていた。

 しかしながら、まだメッセージのやり取りはしていないようで、部活中に「なんて送るべきかな?」としつこく相談された。

「彼氏いるかどうか聞いたら?」

 そう答えるより他はなかった。
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