グレーな彼女と僕のブルー
 部活を終えて帰宅すると、リビングでテレビを観ていた紗里と大和が物欲しそうな顔で僕を見てきた。

「お帰り、恭ちゃん」

「お帰り」

 う……、このパターンは……。

 痩せたお腹を鳴らしながら大和が近付いて来た。肩に掛けた通学鞄を下ろしながら「晩ご飯前だぞ?」と言ってみる。

「大丈夫」

 あらかじめ用意していたのか、大和は後ろ手に持っていたホットケーキミックスの袋をズイと突き出した。

 無言の食べたい、に負け、ため息とともにキッチンに向かう。

 とりあえず三枚を焼き、ひとり一枚ずつを平らげた。いつもならあと一時間もしないうちに晩ご飯のはずだが、今日に限っては紗代子叔母さんの姿が見えない。当然、母の帰宅もまだだ。

「ママ、今日は残業で一時間ぐらい遅くなるんだって」

「……そうなんだ」

 じゃあ母さんの方が早いかもしれないな。

 三人分の食器とその他もろもろ出ていたグラスや皿を洗い終わった頃に、「ただいま〜」と玄関から帰宅を知らせる声が届いた。母のものだ。

 お帰りなさい、と声を掛け、紗里と大和は再びリビングにあるテレビにかじりついた。どうやら刑事もののドラマを観ているようだ。

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