グレーな彼女と僕のブルー
「美弥子から聞いて一度恭介のご飯を食べてみたいと思っていたの。どれもこれも本当に美味しいわ、ありがとう」

「……良かったです」

 ちゃんと本人にも喜んでもらえたので作った甲斐があった。

 ご飯の後に紗里特製のケーキを食べてお開きとなった。スポンジから手作りのケーキは甘さもちょうど良くて、どこか無性に懐かしい気持ちになった。

 そういえば今の仕事で母が多忙になる前までは、毎年作ってくれていたのだ。お店で買ったものも勿論美味しいけれど、手作りはやはり温かみがあって良いなと思った。

 僕の誕生日でもないのだけれど……。

 大和から順に入浴し、その合間に母と夕飯の後片付けを進めた。

「恭介、今日は本当にありがとうね。最高の誕生日になったわ」

 母が洗った食器を、順々に布巾で拭いて片付けていると、叔母さんに改めてお礼を言われた。「いえ」と短く答え、僕は首を振った。

「料理の献立から何まで、ぜんぶ紗里が企画してくれたんで、俺はそれを手伝っただけです」

「……あの子が?」
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