グレーな彼女と僕のブルー
 自我が芽生える頃になり、親以外からの「可愛い」になんとなく違和感を覚えるようになった。それが五歳になり、六歳になり、親の教えもあって僕は男子であると認識した。

 男子はスカートを穿かないのが世間での常識だ。

 確かに、僕の目鼻立ちや顔の輪郭、細い猫っ毛は女の子みたいだった、それは否定しない。長いまつ毛だって生まれつきクルンと上向きにカールがかっている。

 パッと見、間違ったご婦人たちを責める気なんて毛頭ない。

 けれど、従姉弟の赤城 紗里はどうだろう。彼女は僕を男の子だと分かった上で、僕に女装させるのを趣味としていた。はっきり言って異端者だ。

 僕の女顔を好み、"妹として"純粋に可愛がっていたのだろう。それはまるでペットを愛でる気配ですらあった。

 母の姉である紗代子(さよこ)叔母さんの娘だから、僕は何事も言わず我慢していた。

 本当は嫌だと心の底から叫びたかったのに、一つ上のお姉ちゃんと衝突するのが嫌で自らの気持ちを抑えつけていた。

 僕は他人との争いを好まぬ平和主義で、よく言えば繊細、悪く言えば精神的に脆かったのだと思う。
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