グレーな彼女と僕のブルー
 アドバイスでも何でも無けりゃ、単なる嫌がらせだった。そんなバテた状態でタイムが伸びるわけがなかった。

「なぁ恭介」とそばにいる誠がコソッと囁いた。

「なんか古賀先輩。恭介にだけ厳しくね? おまえ何かした?」

「……さぁな」

 心当たりを挙げるとすれば、紗里と関わり合いがあることぐらいだ。

 同居のことは口止めしてあるが、紗里と先輩が付き合っているとしたら、もはや筒抜けだと思った方がいいのかもしれない。

 パワハラ同然の先輩に従うのは(しゃく)だが、とにかく淡々とメニューをこなすことにした。

 吸うを二回、吐くを二回の呼吸法を意識しながら、プラスされた距離を鑑みたペース配分で足を進める。

「しゃあねぇから俺も付き合うぜ」

「……サンキューな」

 誠のその言葉が正直なところ心強かった。

 外周5周を過ぎたころ、いきなり肩にドン、と衝撃を受けた。

 ……っえ!

 ぶつかられた拍子に体がフラつき、体勢を崩す。

 何事もなかったかのように走り抜けて行く古賀先輩を視界に捉え、なにクソと躍起になった。

 フラついて転けそうになるのをグッと堪えて右足を軸に立て直そうとする。
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