グレーな彼女と僕のブルー
 しかしながら、足を付いた場所が悪かった。

 思い切り踏ん張った右足は、角材の上を踏みしめていた。紗里が昼間に置いたあの角材だ。

 あ、と思ったときには遅かった。

 そのまま足を捻る感覚が痛みと共に脳へと到達し、派手にすっ転んだ。

「恭介!?」

 僕の少し前を走る誠が振り返り、すぐさま舞い戻って来る。

「……っ、」

 これは……。ヤバいかもしれない。

 その場にうずくまりながら、僕は捻ったばかりの右足を抱えた。背中や頭から吹き出す脂汗のせいで暑いのに冷やりとする。

 痛みに悶えつつ、ふと誠以外の存在が視界の隅に映った。スカートを穿いた制服姿の女子だ。

 数メートル先に、神妙な顔つきで僕を見る紗里が立っていた。

 ***
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