グレーな彼女と僕のブルー
 サリーちゃんはとにかく運命という言葉が好きで、よく使っていた気がする。

 運命共同体って……。まるで将来を誓い合った夫婦みたいだ。

 嫌な記憶ほど強く鮮明に残ったせいか、紗里との思い出は嫌なものばかりだと思い込んでいた。

 けど、あんなにも無邪気に笑い合うこともあったんだ。

 他人事にも似た感覚でぼんやりと思い返していた。

 もはや見慣れた天井の壁紙と丸いシーリングライトを、見るとはなしに見つめ、昨夜のことを思い出す。

 夕陽の差す道路橋で紗里は自身の秘密を打ち明けてくれた。

 勿論、驚いたし、なぜ紗里の身にそんなことが起こるようになったのか、きっかけも尋ねた。

 紗里は曖昧に首を傾げて笑い、「家に帰ってから話すね」と続けた。

 紗里と並んで跛行しながら帰宅し、夕飯と入浴を済ませてから話を聞いた。

 二階の部屋に上がるのが困難だったので、紗里が僕のいる部屋を訪れた。


 **

「いつもいつもね、四六時中視えているわけじゃないんだよ」

 そう言って切り出し、紗里は折りたたみテーブルの前に腰を下ろした。
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