グレーな彼女と僕のブルー
 説明に必要だと思ったからだろう、彼女は性別女性のノートを取り出し、既に何かしらが書かれたページを開いた。

 ノートには行を違え、箇条書きでそれぞれの項目が記されていた。

 ・目の話(失明から角膜移植、右目のみ灰色)

 ・留年したこと(強制からのストレス、一度だけ影に背いた)

 ・準備予知の話(変えられるのは示された行動を取る未来のみ、元々の未来と変えた結果がどうなるかは話せない)

 パッと読んだだけでは詳細の分からない文章だが、僕にありとあらゆることを話そうと考えた紗里の決意が窺えた。

「まず最初に。目の話なんだけど」

「うん」

 互いに緊張しながら向かい合って座り、僕は目線をノートに据えた。

 お風呂を済ませたあとなので、紗里が来た瞬間から柑橘系の香りがそこら中に漂っているが、この際無視だ。

「去年、なんだけどね。スズメ蜂に目を刺されたの」

「……え。スズメバチ??」

「そう。右目の黒い部分だけをブスッと」

 言いながら紗里が灰色で満たされた眼球を指で示した。

 あまりに痛そうだと想像し、思わず顔をしかめた。

「それで……どうなったんだよ」
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