激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
12月になると、街はクリスマス一色。
千花の勤める保育園でも元気いっぱいの声でクリスマスソングが歌われ、サンタクロースにどんなプレゼントを貰おうかとあれこれ悩む姿は可愛らしく癒やされる。
最年長の5歳クラスの女の子の中にはお手紙ブームが到来していて、今日の千花は彼女たちと一緒にサンタさんに手紙を書いた。
必死に鉛筆を握り、まだたどたどしい間違いだらけのひらがなを駆使して『きらきらのゆびわがほしいです』『おおきいくまのぬいぐるみとおままごとせっとがほしい』などと書く様子を思い出すだけでもにやけてしまう。
15時半で仕事を終え、千花は電車を乗り継ぎ、お気に入りのパティスリー『bonappetit(ボナペティ)』がある駅に降り立った。
『bonappetit』はベルギー南西部にあるワロン地方に本店を持つチョコレート専門店。ケーキ、ショコラ、焼き菓子、マカロン、ガトーなど、カラフルなショーウィンドウは甘党の千花にとって、まるでお菓子の家のようなウキウキした気持ちにさせてくれる。
3年程前に大型商業施設に日本初出店して以降、現在では都内に3店舗、大阪や神戸、福岡などに5店舗出店し、ちょっと贅沢なショコラを買うなら『bonappetit』と言われるほど有名になった。
いくつもの賞をとったパティシエが手掛ける商品の味や見た目も最高なのはもちろんだが、千花がこの店を気に入っている理由は別にある。
颯真との婚約を言い渡されて初めて2人で食事に行った際、お土産にと渡してくれたのがこの『bonappetit』のチョコレートフィナンシェだった。