激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「ここがホーフブルク宮殿…!」
ウィーンの中心地にあるハプスブルク家の居城、ホーフブルク宮。
旧王宮の入り口、ミヒャエル広場には白馬の引く馬車が行き交い、帝国と宮廷文化の残り香を感じて千花はうっとりとため息をついた。
「ウィーンに来たって感じがする…!」
「千花、それ昨日ホテルに着いたときも同じこと言ってた」
クスッと笑う颯真を上目遣いで睨んでみても、ここに連れてきてもらえた感謝と感動で拗ねてばかりはいられない。
昨夜から泊まっているホテルはウィーンでも指折りの名門ホテルで、オープニングセレモニーには当時の皇帝であるフランツ・ヨーゼフ1世も臨席したという。
各国の王侯貴族や著名人たちが多く宿泊したことで知られる豪華絢爛なホテルは、ロビーや奥に見えるサロンもまるで宮殿のような眩さで、1週間もここに滞在するのかと信じられない気分にさせられた。
圧巻なのはロビー奥から上がれる階段で、天井には大きなシャンデリア、床には赤い絨毯、正面にはフランツの肖像画が飾られている。ゆっくりと上ってみれば、それだけで自分がまるでお姫様になったかのような気分にさせられた。
部屋に案内されると当然ながらスイートルームで、2人で過ごすには十分すぎるほど広くて豪華な部屋。
千花は改めて凄い人のもとに嫁いだのだと実感してしまった。