激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
なにせ弥生は一度無断で逃げてしまっているのだ。月城家はもちろん、森野家の両親だってすんなり許しはしないだろう。
「でも…やっとお姉ちゃんが帰ってきたのに、颯くんだって、きっと……」
「千花。今は弥生さんや月城さんの気持ちは置いておいて。千花はどうしたいの?」
「わ、わたしは……」
「いくら政略結婚だって、千花はちゃんと月城さんを好きになって結婚したんでしょ?」
そう。いくら姉の身代わりの結婚だったとはいえ、千花は本気で颯真を好きだった。
でもだからこそ、姉が帰ってきた今、颯真の気持ちが自分にないことを目の当たりにしながら妻でいることが辛い。
大好きな姉がいなくなってしまったことに寂しさを抱えながらも、姉がいなかったからこそこの幸せに思えた結婚生活は成り立っていたのだ。そのことを、千花は弥生が帰ってきて強く実感した。
大好きで、憧れで、それなのにコンプレックスを抱いてしまう相手。それが千花にとっての弥生の存在だった。
「それに、私は月城さんだって千花のことをちゃんと好きなんだと思うけどなぁ」
「え?」
「ほら、前に山崎先生と矢上さんと4人で飲んだ時。月城さんが急に迎えに来たと思ったら『妻がお世話になってます』って挨拶したでしょ」
「うん」