激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


次の日。「いい?思ってることちゃんと話すんだよ!」と念押しして陽菜は保育園へ出勤していった。そんな親友の優しさに何度もお礼を告げ、千花はある場所に立ち寄ってから自宅に帰った。

颯真はすでに出勤したあとで、誰もいない広い部屋。千花はカバンからスマホを取り出し電源を入れた。

昨夜、陽菜の家についてすぐに颯真に【電話出られなくてごめんね。今日は陽菜の家に泊まります。充電が切れそうだから返信は出来ないかも】というメッセージと、深刻さを気取られないようにふざけたパンダが両手でごめんねのポーズをしているスタンプを送り、電源を落とした。それ以降スマホを触っていないので、どんな返事が来ているのかも見ていない。

(昨夜はお姉ちゃんとどこかに泊まった、とか…、そんな連絡がきてたらどうしよう……)

嫌な想像を振り切るように首を振り、起動したスマホに目を向ける。昨日送ったメッセージは既読になっていて、【わかった。楽しんでおいで】と返信が来ていた。

さらに今朝【おはよう。今家を出る。行ってきます】という朝の挨拶と一緒に、【弥生が帰ってきてる。電話折り返してやって】と簡潔な報告が送られてきている。

颯真のいつもの出勤時間よりも遅めの時間にきていたそれを読み、家に帰ってきてたんだとホッとする自分が嫌になる。

弥生からであろう不在着信は夜の間にも2回ほどあったが、やはり千花は折り返す気になれない。

姉は昨日『千花には何て謝ったらいいか…』と颯真に話していた。弥生が千花に謝罪したいことなんて、きっとひとつしかない。


< 118 / 162 >

この作品をシェア

pagetop